年末年始の暇な時間帯に「杜甫全詩集」を拾い読みした。旅というか放浪というか、絶えず居場所を変えていた彼は、その旅の道中や行く先々での景色に感動して作詩した。彼の場合、風物の特徴を賛美し、自然の移り変わりに心動かすだけでなく、自らの境遇ーそれは世渡り下手で、経済的にも社会的立場的にも非常に恵まれない境遇であるのだがーを嘆き、自戒することでストレスを解消していたように思われてならない。その一方で、多くの友人知人たちとの交遊や交流を大切にし、彼の詩がそのまま彼らへの通信書・手紙となっている。杜甫に影響を受けた芭蕉にとって、その時代性も異なり、その社会的立場も異なって入るが、友人知人との交流を大事にして、旅を重ねる生き方を選び、その旅の中で芸術活動に勤しんだ、という点は全くもって同一である。私はといえば少々老人になったとはいえ、今年もまた、行動し、旅をし、多くの友人知人を増やす年にしたいと思う。